nanacara

nanacara for Doctor

ナナカラ フォー ドクター

浅ノ川総合病院

浅ノ川総合病院 | 小児科 中川裕康先生

浅ノ川総合病院 | 小児科 中川裕康先生

石川県てんかん診療拠点機関である浅ノ川総合病院てんかんセンターのてんかん専門医である小児科の中川裕康先生に、医師としての歩みや、nanacaraの効果について伺いました。

ー いつもnanacaraを応援してくださり、ありがとうございます。中川先生、よろしくお願いします。まずは先生が医師を志したきっかけについて教えてください。

中川先生:兄が脳性麻痺だったことが大きかったですね。両親が一生懸命に兄を介護している姿を見て育ったのが影響していると思います。私が生まれた時から障害のある兄が当たり前だったので、特別な感じはなく、自然に受け入れていました。
医学部に入り、研修医としていろいろな科を回ってみて、高齢者の治療が老化の症状で治らない病気が多いと感じ、小児科の方が治る病気が多く、治療のやりがいがあると感じました。そして、ここもやはり兄が影響していると思いますが、小児神経は楽しく、子どもたちの発達や成長を見るのがやりがいとなっています。

ー 特に印象に残っている患者さんはいますか?

中川先生:最初の患者さんはやっぱり今でも覚えていますね。神経ではなく白血病の患者さんです。大学の時は病棟がメインだったのでその患者さんとずっと一緒に過ごして、本当に毎日何時間も一緒にいました。最初、状態は良くなかったのですが、最終的には回復して退院しました。嬉しいという感情となにか少し寂しさのような感情が入り混じった気持ちになったのを覚えています。浅ノ川総合病院に来てからは、ウエスト症候群を治療して発作が止まり退院できた子が一番印象にあります。今もここに通ってくださっていて信頼関係も築けている感じがします。

ー 浅ノ川総合病院てんかんセンターにはいつ来られたのですか?

中川先生:ここにはてんかんセンターの小児部門の立ち上げで来ました。もともと病院自体に小児科がなかったのですよ。医局人事で3年ぐらいの感じで来たのに、気付いたらもう10年ぐらい経ったんじゃないかな(笑)。
てんかんセンターの基盤ができつつあるとは思いますが、今も1人で小児科を担当しているので、もう少し小児のてんかん診療医を増やしたいと思っています。

浅ノ川総合病院 | 小児科 中川裕康先生

ー 次は先生の普段の診察についてお聞かせください。患者さんはどのようにして先生のところに来られるのでしょうか?

中川先生:主に大学病院や市中病院から紹介されてきます。てんかんの治療をしていてなかなか発作が止まらないということで紹介いただくことが多いですね。なので、てんかんという診断がつく方に限ればここに来る9割以上は大学病院や市中病院からの紹介です。大体週に2、3人ぐらいですね。例えば福井県などの石川県外の方、県内でも能登や南加賀など遠方から来られていて症状が落ち着いている方は地元の市中病院に紹介して治療継続をお願いして、1年に1回、夏休みとか春休みだけこちらに来て検査をして治療方針を確認するという患者さんも結構います。
小児科では問診票を使わず診察室で一から問診しているので、初診では、ご家族から発作の経過や発作が起きる状況を詳しく聞き取り、一方で子どもはプレイスペース(診察室内のおもちゃのあるスペース)で遊んでもらいながら、どういう遊びをしているか、発達や運動などを観察します。あとは採血、脳波をその日にしていますね。60分の脳波です。その結果については当日お伝えしています。
外来で診断が難しい場合は長時間ビデオ脳波を用いた入院検査で診断を行います。最後の検査が終わって診断がついたらてんかんの説明をして、その時にご家族に発作の観察や記録をつけてほしいという話をします。その方法としてnanacaraを案内しています。発作はご家族からまずは口頭で確認し再現してもらうことが多いですが、なかなか難しいので、発作動画を撮れたら撮ってきてねと、動画撮影を勧めています。

ー nanacaraの印象はいかがですか?

中川先生:アプリ自体が継続しているのが一番いいですね。これまでいくつか発作記録のアプリがあったのですが、途中で使えなくなることもありました。nanacaraは長く続いているので、3年前に知ったときから記録が溜まっていて、振り返った時に意外と発作が減っているというのが視覚的にわかりやすいですね。例えば、お母さんは多い多いっていうけど昔はもうちょっと多かったよね、とか。ただ、石川県はまだ紙の手帳を使っている人も多いのが現状です。全く記録をつけない方もいます。つけてほしいとは思うけども、それ以外で大変なのだろうなと思い強要はしません。記録をつけることで心配が増強するのは良くはないですからね。

ー 患者・ご家族の生活がベースとしてあって、その上で余裕があったら記録をつけて、ということですね。
これまで約3年ご利用になって、nanacara for Doctorがどのように診察に役立っているか、または便利な点などはありますか?

中川先生:そうですね。治療方針がはっきりします。医師とご家族の発作の状態の認識が合わせやすいと思いますね。グラフを見ながら、ある程度落ち着いているのであれば薬の調整はもうちょっと待ちましょうかとか、次までに発作があればお薬を増やしてみましょうか、というやりとりをするのにとても役立っています。グラフで見ると発作が増えているのか減っているのかとかわかりやすいですよ。発作の状態を共有するためのコミュニケーションツールですね。大げさにいうと、患者さんとわたしの架け橋になっているかもしれないです。
以前、患者さんにnanacaraでの発作記録を案内した際に、「はい記録してます」と言われ驚きました。nanacaraの認知度は上がっている気がしますね。てんかんの患者さんとその家族向けの講演会で話をすることがあるのですが、nanacaraを知っていますという方が結構います。

ー とても嬉しいです。これからのnanacaraに期待することを教えてください。

中川先生:そうですね。患者さんに対していろいろな情報提供ができるといいと思いますね。てんかんの診療もそうですけど、さまざまな制度やリハビリについてなども。その都度その都度必要なことは分かる範囲で説明してはいるのですけど、抜けていることもあると思いますので。年始に痛感しましたが、災害の時に役に立つ情報などもあると良いと思います。

ー 記録だけではなく、nanacaraからの情報発信ということですね。WEPiLiというてんかん情報サイトを運用しているので、その情報を充実させ、より多くの患者・ご家族にお届けできるようにしていきたいと思います。

本日は貴重なお時間をちょうだいし、ありがとうございました。

石川県てんかん診療拠点機関である浅ノ川総合病院で、唯一小児てんかんを診られている中川先生。お兄さまの影響を受けながら自分の道を歩み続け、小児科医として、特に小児神経の分野での中川先生の情熱と温かさ、患者・ご家族への思いやりを感じました。

nanacaraは、患者・ご家族と医療者の架け橋となり、今後も患者・ご家族のQOLの向上の一助になるよう、より良いサービスを創っていきます。

(本文にはないですが、了承をいただいた上で診察後の患者さんとお会いし、お話を伺う機会もいただきました。貴重な経験をさせていただき誠にありがとうございます!)

浅ノ川総合病院 | 小児科 中川裕康先生
▲向かって左から、ノックオンザドア(株)村上、中川先生、ノックオンザドア(株)石山