てんかん患者家族インタビュー

てんかん患者家族インタビュー

患者家族が語る、てんかんと共に生きる日々

てんかんは、発作のコントロールだけでなく、日々の生活や家族の関係にも大きな影響を与えます。今回の調査では、てんかん患者の家族の方々にインタビューを行い、

「日常の課題」「家族としての想い」「社会への願い」

についてお話を伺いました。

それぞれの家庭で異なる背景を持ちながらも、共通するのは「よりよい未来を願う気持ち」です。睡眠不足や自由時間の制限、外出の困難さといった現実と向き合いながらも、大切な家族とともに前を向いて歩んでいます。

この章では、実際の声をそのままお届けします。

「てんかんと共に生きるとはどういうことか?」

そのリアルな姿に触れていただければと思います。

てんかん患者家族インタビュー

柳原麻衣さん

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11歳と7歳のお子様を育てるお母さん。下のお子様(7歳)は、前頭葉てんかんを患っており、15分から30分に及ぶ強直発作が起こることも。就寝時に発作が多く、毎日2時間から3時間は特に目が離せない。

発作が起きやすい夜の不安

柳原さんは、特に幸忠くんが寝入りばなに発作を起こしやすいことに悩んでいます。「眠りにつくタイミングで、急に発作が始まることが多いんです。
だから、寝かしつけのときはいつも隣にいて、2〜3時間は見守り続けています」と語ります。その後も、寝言や寝返りの音に敏感に反応してしまい、「あっ、もしかして発作?」と何度も目が覚めてしまうそうです。「長く寝られても2〜3時間が限界です。夜中に何度も確認するので、朝までぐっすり眠れた記憶が本当にありません」

学校行事の壁

学校の行事や遠足の際には、先生方に発作のことをしっかり伝え、対応方法をお願いする必要があります。「遠足のバスの中で寝ちゃうと、発作を誘発する可能性があるんです。だから、バスの中では寝ないようにとか、寝そうになったら声をかけてくださいってお願いしています。」
そのため、どうしても行事に参加できないこともあり、「普通なら当たり前に楽しめる行事が、私たちには少しハードルが高いんです」と柳原さんは言います。

夢は家族でディズニーや沖縄、北海道へ旅行に

本当はもっとお姉ちゃんとも一対一の時間を過ごしたいんです」と柳原さん。今はなかなかその余裕がなく、日々の生活に追われている状況です。
「旅行に行きたい気持ちはあっても、発作が起こったときに救急対応できる病院があるのか不安です。旅先がその病院まで緊急搬送できるかわからないから、なかなか旅行へも行けません。特に冬場は発作が増えるので、旅行どころか少し遠出するのも不安です。」
「ディズニーランドや沖縄、北海道の親戚に会いに行く、何気ない家族の思い出を作りたい」が今の柳原さんの夢です。

柳原さんの1日のスケジュール

柳原さんの1日のスケジュール
柳原さんの1日のスケジュール

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河越直美さん

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12歳の奏くんは、MECP2重複症候群とレノックス・ガストー症候群。
1日に10回以上の強直発作があり、日常生活に大きな影響を与えています。医療的ケアとして胃ろうや吸引が必要で、ケアに追われる日々。

MECP2重複症候群とは?

MECP2重複症候群はX染色体上の遺伝子の重複によって引き起こされる疾患で、多くの場合、男の子に発症します。特徴的な症状として、繰り返す感染症と難治性てんかん発作があり、小児期には特に免疫が弱く、頻繁に入院を余儀なくされるケースが多いといいます。奏くんもまた、小学校に上がる前後から発作を発症し、現在では1日10回以上の強直発作に悩まされています。

睡眠時間は3〜4時間、多い時でも5時間?

夜中3時ごろに発作が起こることが多く、吸引や対応に追われます。ようやく寝られたかと思うと、朝6時には薬を与えるために起床。日中は奏くんの登校準備、医療的ケア、送り迎えと続き、自由な時間を確保することはほとんどできません。さらに、医療的ケアが増えたことで、生活リズムが大きく変化しました。胃ろうからの注入、吸引、看護の対応など、時間ごとに必要なケアが発生し、1時間に1回は何かしらの対応をしている状況です。
「1日が26時間や27時間あればいいのに、と思うくらいです。」

「発作のバカヤロー!」発作に左右されない生活を送りたい。

発作があることで、計画していたお出かけが突然キャンセルになることも多々あります。お姉ちゃんも「どうせまた発作が起こるでしょ」と言うことが増え、家族の時間が制限されてしまっているのが現状です。「発作のバカヤローと叫びたくなる日々です」と河越さん。
「せめて、1ヶ月に1回程度の発作に抑えられれば、日常生活が大きく変わるはず。」

河越さんの夜間のスケジュール

河越さんの夜間のスケジュール

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佐々木千恵さん

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佐々木さんは5人家族で、ご主人、14歳の娘・寿姫(ことぶき)ちゃん、ご両親と一緒に暮らしています。
寿姫ちゃんは生後2ヶ月で発症し、生後10ヶ月でドラベ症候群と診断されました。

ドラベ症候群とは

引用:ドラベ症候群患者家族会HP https://dravetsyndromejp.org/
ドラベ症候群(Dravet症候群)は、乳児重症ミオクロニーてんかん(SMEI)とも呼ばれ、乳幼児期に発症する難治性てんかんです。1歳未満で最初の発作が起こり、その後も発作を繰り返し、重積発作(てんかん発作が5分以上継続すること)となることも度々あります。体温の上昇や光、ある種の模様などによって発作が誘発されるのが特徴で、特に入浴中や入浴後、38℃台の発熱によって発作を繰り返すケースが多く見られます。寿姫ちゃんは新薬をスタートしてから1年以上発作が抑えられていましたが、今年1月に1年2ヶ月ぶりに発作が発生。これがきっかけで改めて病気の怖さを実感したといいます。
周りのドラベの子たちも、1年以上発作がなかったのに突然重症化することがある。この病気は常に警戒が必要だと痛感しました。」。

半分目を開けた状態で寝ているような感じ

寿姫ちゃんが体調を崩したり発熱したりすると、夜通し看病しなければならず、ほとんど眠れない日もあります。特に夜中に熱が急上昇すると発作が誘発されるため、細心の注意が必要です。
夜中に発作を見逃すのが怖いので、半分目を開けた状態で寝ているような感じですね。」
寿姫ちゃんが小さい頃は同じ布団で寝ていたため、呼吸の変化などで発作に気づくことができました。しかし現在は別々の布団で寝ているため、意識して確認しないと発作を見逃してしまうリスクがあります。

Netflixを見る時間はあるけれど、映画館には行けない

寿姫ちゃんが学校に行っている間、多少の自由時間はありますが、いつでも呼び出しに対応できる状態でなければなりません。そのため、外出が制限され、趣味に没頭することは難しいと話します。
「好きな俳優の映画が上映されていても、映画館に行けないのが悔しいですね。」
また、美容院なども事前予約が難しく、当日飛び込みで行くことがほとんどだそうです。

母親たちが働くためのハードルと現実

佐々木さんは現在ドラベ症候群家族会の常務理事などの活動をされていますが、外で働くことは難しいと話します。病気のある障がい児の家庭で母親が働くには、(1)実家の支援(両親の健康) (2)学校の理解 (3)病状の安定 (4)職場の理解 (5)福祉支援サービスの理解などが不可欠ですが、それらが揃わないと働くことは難しいといいます。「生まれ変わったら看護師になりたいですね。手に職があればもう少し選択肢が広がったかもしれません。」

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米田和美さん

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娘のももちゃんは18トリソミー(エドワーズ症候群)と診断され、さらに。レノックス・ガストー症候群(LGS)も併発。
難病に向き合う和美さんはじめ、ご家族のことをお伺いしました。

晩ご飯に3時間かかることも

「訪問看護やリハビリが入る平日の午前中はほぼスケジュールが決まっています。午後は学校に送り出し、帰宅後は医療ケアや家族の食事準備。夜は、モモがなかなか寝てくれないこともあり、時には朝まで付き添いながら過ごします。」
また、食事に関しても気を配りながら対応しているといいます。
食べる時は20分ほどで終わりますが、食べない日は3時間かかることもあります。」

家族だけでなく学校など支援者と共にてんかんに向き合う

「発作の頻度は月によって異なりますが、ホルモンバランスの影響も受けるため、落ち着いている時は0~2回程度。ただし、大きな発作が起きるとしばらく不安定になります。」
米田さんは日々、お子さんの発作と向き合いながら、病院や学校との連携を大切にされています。特に学校との情報共有にはアプリが大きく役立っているそうです。
学校の先生が、授業中だけでなく休み時間も様子を見てくれるので、安心して通学させることができます。情報共有は、親だけでなく、支援する側の負担も軽減できると感じています。

Netflixを見る時間はあるけれど、映画館には行けない

寿姫ちゃんが学校に行っている間、多少の自由時間はありますが、いつでも呼び出しに対応できる状態でなければなりません。そのため、外出が制限され、趣味に没頭することは難しいと話します。
「好きな俳優の映画が上映されていても、映画館に行けないのが悔しいですね。」
また、美容院なども事前予約が難しく、当日飛び込みで行くことがほとんどだそうです。

家族としての当たり前」を大切に。

「兄や姉は、『モモだけ宿題しなくていいの?』とよく言います。障がいのある子どもとしてではなく、普通の兄妹として接することを大切にしています。
また、学校の部活動にも積極的に参加し、周囲と自然な関係を築くことを心掛けています。「モモが部活を続けられたのは、周りの理解と、環境が整っていたからです。支えてくれるみんなに感謝しています。」

家族みんなでオーロラを見に行きたい。

これは、米田さんの5年以内に叶えたい夢のひとつです。
「未知の場所に行くのは大変かもしれないけれど、家族みんなで同じ景色を見て、共感し合いたい。そんな思いがあります。」
また、日常の中でてんかん患者と家族がより暮らしやすい社会になることを願いながら、活動を続けていきたいと話します。
「てんかんの理解が進み、どの家族も気兼ねなく外に出られるような社会になってほしいですね。」

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梅津由香さん

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両大血管右室起始(心疾患)、水頭症(脳疾患)、ウエスト症候群、部分てんかんなど、様々な疾患と向き合いながら翔生(トイ)くんを育てる梅津由香さんにお話を伺いました。

発作は1日30回。

発作は1日30回ほどあり、特に高い音や突発的な音で発作が誘発されることが多いです。子どもの声やドアが閉まる音に反応しやすく、20秒程度の部分発作が頻繁に起こります。」
「ただ、最近は成長とともに予測が出来るようになり『今から音が鳴るよ 3、2、1!』と声をかけると、翔生くんもそれを楽しみにしてくれるようになりました。

お子様と乗り越えた体調不良の2ケ月間。

「翔生が夜間に発作を起こすこともあるため、常に気を配っています。睡眠は毎日4時間ほど。でも、私はショートスリーパーだから大丈夫だと思っていました。」
ところが今年、翔生くんだけでなく梅津さん自身も喘息を発症。入院するわけにもいかず、自宅でステロイド治療を続けながら、日常のケアをこなさなければなりませんでした。
「この2か月間は翔生が学校に行けず、私自身も療養しながらの生活。本当に大変でした。」
子どもの体調管理だけでなく、親自身の健康維持の難しさを痛感する日々。それでも梅津さんは、翔生くんの回復を優先しながら、前向きに日常を乗り越えてきました。

家族で旅行にチャレンジ!

梅津さんは、翔生くんが少しずつ自立し、家族全員がより自由に過ごせる時間を持てるようになることを目指しています。
「今は私が常にそばにいなければなりませんが、成長とともに、少しずつ環境を整えていきたいです。」また、家族全員での旅行も挑戦の一つです。
「昨年は3回旅行に行きましたが、そのきっかけは抽選でご招待をいただいたことでした。これまでなかなか遠出ができなかったのですが、あえて挑戦することで、翔生も家族も少しずつ環境に適応できるようになりました。これからも、できる範囲で新しいことにチャレンジしていきたいです。」

温泉旅行にも行ってみたい。

もし半日でも自由な時間ができたら、友人と会うか、ゆっくり休むかで悩むといいます。
自分の時間ができるのは本当に貴重で、そのときに何をするかは毎回迷います。でも、リフレッシュする時間があるとまた頑張れるんですよね。翔生が修学旅行とかお泊まりいけるようになったら久しぶりに夫婦で温泉に行ってみたいです。